遺言イメージ

公証人も涙した感動の遺言書

私が初めてAさんにお会いし、遺言書作成のご相談をいただいたのは、ちょうど1年前のことです。
相談内容は、「自分があの世にいったら、いま住んでいる家と土地をA市に寄付したい」というものでした。
条件はありますかと聞いたところ、かえってきたのが「とにかく介護に役立てて欲しい」という言葉だったのです。
Aさんは60歳で、夫は15年前に他界し、現在は一人暮らしで子供はいません。
両親も既になくなっており、ご存命の血縁は兄が一人と姪っ子が2人だけでした。
性格は男勝りで、元気印を絵に描いたような女性です。
ただ、それでいてオシャレ心も忘れず、とても魅力的で粋な方です。
Aさんはケイタイメールの使い手でもあります。
絵文字やデコメールもお茶の子さいさい。
実は私自身、このAさんから携帯での絵文字の使い方を教わりました。
パソコンもプロ級で、デザインソフトを駆使していろいろな案内状まで作ってしまいます。
そのAさんは、自身のお父様の介護の際に、大変な思いをされたそうです。
その経験をきっかけに、お父様を見送られた後も介護で困っている人の役に立ちたいと、介護福祉ボランティアの活動に積極的に取り組んでいます。
そんなAさんの遺言書の文案づくりを進める際に、1つ困ったことがありました。
それは、なかなかAさんのアポが取れないことです。
とにかく、Aさんのスケジュールを抑えるのが大変なのです。
文案づくりには、何度かご本人とお会いしてヒアリングをする必要があるのですが、私が電話でそのようにお伝えする度に、メールでいいよ。
メールで。
と断られていました。
話を戻しますが、私が文案づくりをする際、念頭に置いているポイントの1つに「果たしてこの内容はきちんとそのとおりに実現されるのか」というものがあります。
せっかく遺言書を書いても、その内容が実現されなくては意味がないからです。
Aさんのご希望にそう遺言書の文案を作ろうとする際、このポイントで問題が起きないか私は懸念しました。
なぜなら、不動産は預貯金と違って維持費が係るため、地方自治体によっては死後の寄付を受け付けてくれないことがあるからです。
直接、市の担当部署に連絡して確認してみると、やはりその心配が的中し、低調にお断りされてしまいました。
でも。
それではAさんの厚意を無にしてしまいます。
Aさんと一緒に市の社会福祉担当課長にかけあい、市内外のNPOを3団体紹介してもらいました。
早速、各団体の皆さんにお会いし、その席でAさんは土地遺贈の話を熱く語りました。
すると、いずれの団体でも喜んで引き受けてくださるとのこと。
これで、実際に介護に役立てられることになり、ほっと一安心でした。
何回か打ち合わせを重ね、最終的には3団体のうち同じ市内にあり、以前Aさんのお父様の介護でもお世話になった団体BにAさんの死後、土地を遺贈することで決着しました。
ただし、遺贈は事由に放棄できるので、Aさんと話し合い、「万一、団体Bが遺贈を放棄した場合には団体Cに遺贈。
さらに、団体Cが放棄した場合には団体Dに遺贈」という3段構えの記述にすることにしました。
また、私自身も、もう1人の公証人役場の証人も、遺言書の文案を読み上げる松田さんにつられて手で涙を拭いながら、読み合わせをすすめました。
公証人も、のどを詰まらせて目を真っ赤にしながら、「これで相続人の方も、きっと、わかってくれますよ」と太鼓判を押してくれたのです。

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